「理念やビジョンを伝えているつもりなのに、若手社員にあまり響いていない気がする」
「Z世代の社員は、トップダウンのメッセージだけでは動いてくれない」
こうした悩みを持つ人事・広報のご担当者様は少なくないのではないでしょうか。Z世代は「多様性」「自己成長」「社会的な意義」を重視する傾向が強く、従来型の一方通行なメッセージだけでは、共感や主体的な行動を引き出すことが難しいものです。
この記事では、インナーブランディングに取り組む企業の事例を紹介しながら、成功している企業に共通するポイントと、Z世代に理念を届けるための具体的な方法を解説します。
なぜZ世代にはインナーブランディングが響きにくいのか
Z世代の社員は、給与や待遇といった条件面だけでなく、「この会社で働く意味」や「自分の価値観との一致」を重視する傾向があります。そのため、企業理念を一方的に伝えるだけの施策では、共感や行動につながりにくいのが実情です。
また、SNSやビジュアルコンテンツに慣れ親しんで育った世代であるため、文字中心の資料や堅い言い回しの理念よりも、感覚的に伝わる世界観やストーリーのあるコンテンツのほうが記憶に残りやすいという特徴もあります。
「Z世代は、いかにも企業が用意した『フリー素材の笑顔の写真』などを見ると、『作られた感(リアルじゃない)』を敏感に察知し、心が離れてしまう傾向があります。だからこそ、企業独自の体温やカルチャーを感じさせる、オリジナルで作り込まれたビジュアルが必要なのです。

インナーブランディングの取り組み事例3選
スターバックス|理念と行動指針を、マニュアルではなく浸透で伝える
インナーブランディングの事例として、必ずと言っていいほど紹介されるのがスターバックスです。スターバックスでは、細かな接客マニュアルを設けず、スタッフ一人ひとりが自ら考えて行動することを重視しています。これを可能にしているのが、充実した研修制度を通じた理念・行動指針の浸透です。
「お互いに尊敬と威厳をもって接する」という行動指針が、スタッフの日々の判断基準として根づいているからこそ、マニュアルがなくても一貫したホスピタリティが実現できています。
店舗の空間デザインや緑色のエプロンなど、視覚的なブランドイメージが全世界で統一されていることは、スタッフが『スタバの一員である』という誇り(エンゲージメント)を持つ大きな要因になっているのです。
旭化成|ビジュアルで理念を可視化する
総合化学メーカーである旭化成では、従業員の自律的な成長やキャリア形成を後押しする学習プラットフォームを2022年12月に導入しました。このプラットフォームの活用を促進し、あわせて同社が目指す組織風土を実現するための施策として、ブランドロゴ・スローガン・キービジュアル・コンセプト映像の制作に取り組んでいます。
スローガンは、プロジェクトメンバーや経営層へのインタビューをもとに決定されました。そして、そのスローガンに込められた想いを視覚的にも浸透させるため、ブランドロゴとキービジュアルが制作されています。コンセプト映像には、プラットフォームの活用イメージに加えて経営層のインタビュー映像も取り入れられており、想いと具体的な活用方法の両方が伝わるよう工夫されています。さらに、映像には実際の従業員の姿が使われており、イメージ素材だけでは表現しきれない「自社らしさ」を演出している点も特徴です。
同社の人事担当者によると、導入から3ヵ月の時点で、一度でもログインした従業員は81.0%、1つ以上のコンテンツを学習完了した従業員は64.3%にのぼったといいます。導入から1年半が経過した時点ではログイン率90.4%、学習完了者77.7%まで伸びており、ビジュアルによる浸透施策が、実際の活用状況の向上にもつながっていることがうかがえます。
出典:日本の人事部
言葉だけでは伝わりにくい企業のビジョンや組織風土を、ロゴ・キービジュアル・映像というビジュアルの形に落とし込み、経営層の生の声や実際の従業員の姿を重ねることで、社員が「自分ごと」として受け止めやすくなる。旭化成の事例は、そうしたビジュアルの力を裏付ける好例といえます。
Allbirds|パーパスを従業員文化の中心に据える
海外の事例にはなりますが、サステナブルシューズブランドのAllbirdsも参考になる取り組みをしています。同社はB Corp認証を取得し、環境・従業員・コミュニティを含めたすべてのステークホルダーへの責任を、事業活動そのものに組み込んでいます。従業員のことを「flock(群れ)」という愛称で呼び、オープンな対話を大切にする文化を築いているのも特徴です。
「快適さ」「優れたデザイン」「サステナビリティ」は両立できる、というブランドのミッションそのものが、従業員の働き方や意識にも一貫して反映されています。
Z世代は特にサステナビリティや社会的意義への関心が高い世代です。理念を「言葉」としてだけでなく、「事業のあり方そのもの」として体現している点は、Z世代への浸透を考えるうえで参考になるでしょう。
彼らのWebサイトや社内資料は、自然由来の素材を連想させるクリーンで温かみのあるビジュアルで統一されており、テキストを読まずともブランドの姿勢が直感的に伝わる設計になっています。

成功しているインナーブランディングに共通する4つのポイント
上記の事例を見ていくと、業種も国も異なる企業でありながら、いくつかの共通点が見えてきます。
①世界観が一貫している
理念やメッセージが、資料・オフィス・日々のコミュニケーションなど、あらゆる接点で一貫しているという特徴があります。バラバラな発信ではなく、「この会社らしさ」が統一されていることが重要です。
②ストーリーとして語られている
理念を箇条書きのスローガンとして掲げるだけでなく、「なぜその理念に至ったのか」「日々の業務の中でどう体現されているのか」というストーリーとして語られている点も共通しています。
③デザイン・ビジュアルに落とし込まれている
旭化成の例のように、理念やビジョンをキービジュアルやロゴといった目に見える形に落とし込むことで、社員が直感的に理解しやすくなります。特にZ世代に向けては、文字よりもビジュアルのほうが記憶に残りやすい傾向があります。
④社員が「伝えられる側」ではなく「参加する側」になっている
一方的に理念を伝えるのではなく、社員自身が理念を体現する行動を取ったり、施策の企画に関わったりする「参加型」の設計になっている点も共通しています。
Z世代の感性に響くのは、単なる説明図解ではなく、映画のワンシーンのように感情に訴えかける『エモい』イラストです。透明感のある色彩や、ストーリーを感じさせる構図のビジュアルを取り入れることで、理念は『読まれるもの』から『共感されるもの』へと変わります。

社内報・採用サイト・動画・イラストで世界観を統一する方法
共通点で紹介した「世界観の一貫性」や「デザインへの落とし込み」は、具体的にはどうすれば実現できるのでしょうか。ここでは、複数の媒体でイラストを活用しながら世界観を統一するための3つのポイントを紹介します。
①表紙・理念ページなど「感情が動く接点」から着手する
すべての媒体・すべてのページをイラスト化する必要はありません。まずは、社内報の表紙や理念ページ、採用ピッチ資料のキービジュアルなど、読み手の感情が動きやすい接点に絞って導入するのが効果的です。
こうした接点にイラストを使うことで、「文字で理念を説明する」のではなく「世界観を感じ取ってもらう」という体験に変わります。特にZ世代は、こうした感覚的な接点から企業への印象を形成しやすい傾向があります。社内報での具体的な活用シーンについては、「社内報にイラストを活用する方法」の記事で詳しく解説しています。
②社内向け・社外向けでテイストを分けすぎない
社内報は社内向け、採用サイトは社外向け、と管轄部署が分かれていることも多く、それぞれ別々にビジュアルを制作してしまうケースが少なくありません。しかし、社内・社外で使うビジュアルのテイストが大きく異なると、「発信している理念は同じはずなのに、印象がバラバラ」という状態になってしまいます。
社内報・採用資料・採用サイト・動画など、部署をまたぐ媒体であっても、同じイラストレーター・同じテイストで継続して制作することで、社内外どちらから見ても一貫した世界観を保つのがポイントです。採用資料での具体的な活用例は、「採用ピッチ資料の活用術」の記事もあわせてご覧ください。
③都度の素材選びをやめ、継続的な発注に切り替える
媒体が増えるたびに、その都度フリー素材やテンプレートから探していると、どうしてもテイストがバラバラになりがちです。継続的に同じ制作者・同じ会社に依頼することで、号やページが変わっても世界観を保ちやすくなり、結果的に「この会社らしいビジュアル」として社員や候補者の記憶にも残りやすくなります。

インナーブランディングでよくある失敗と注意点
- 理念を掲げただけで終わってしまう:スローガンを作るだけでなく、日々の接点(社内報・資料・オフィス空間など)で継続的に発信することが重要です
- 媒体ごとにデザインがバラバラになる:社内報、採用資料、Webサイトなど、媒体が増えるほど世界観がぶれやすくなります。同じテイストのビジュアルを継続的に使うことで統一感を保てます
- 一方的な発信になってしまう:社員が「参加できる」仕組みがないと、理念が「会社から押し付けられたもの」に感じられてしまうことがあります

よくある質問(FAQ)
Q. 中小企業やスタートアップでもインナーブランディングは効果がありますか?
はい、むしろ組織規模が小さいうちに取り組むほうが浸透しやすいという見方もあります。経営者と従業員の距離が近い環境では、理念やビジョンが伝わりやすい傾向があります。
Q. イラストはどのくらいの本数から始められますか?
表紙や理念ページなど、要所を絞って1〜2枚から導入することも可能です。社内報や採用資料など、複数の媒体で同じテイストを使い回すことで、少ない本数でも世界観の統一感を出せます。
Q. 海外事例(Allbirdsなど)のような取り組みは、日本企業でも参考にできますか?
はい、参考にできます。国や業種が異なっていても、「理念を言葉だけでなく事業のあり方やビジュアルとして一貫させる」という考え方そのものは、日本企業にも応用可能です。

理念を「伝える」から「感じてもらう」へ
Z世代に理念を届けるには、一方的に「伝える」のではなく、世界観やストーリーを通じて「感じてもらう」ことが重要です。社内報・採用資料・Webサイトなど、複数の接点で一貫したビジュアルを使うことは、そのための有効な手段のひとつです。
自社の理念やカルチャーを、どのようなビジュアルで表現できそうか—–まずはお気軽にご相談ください。
